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かかりつけ薬剤師の制度設計をインセンティブという視点から再考する

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以前の記事で、今のままでは「かかりつけ薬剤師制度」は絶対に普及しないと書いた。

以前の記事:「かかりつけ薬剤師」は今のままでは絶対に普及しない

 

なぜかというと「薬剤師による薬の一元管理」などの仕事は、今まで特別な加算なしでやってきたことで、今回のかかりつけ薬剤師制度の利点はお気に入りの薬剤師を指名できることくらいしかないからだ。患者にとってメリットをあまり感じられない制度なのである。

 

要するに今回発表された「かかりつけ薬剤師」の制度設計は、そもそも普及させる気があったのかと疑ってしまうほど微妙なものである。そこで、かかりつけ薬剤師制度をどうやったら効普及させる制度にできるのかを“インセンティブ”という視点から再考してみたい。

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インセンティブとは

インセンティブとは日本語でいうと「動機づけ」になる。誰もが「目の前に人参をぶら下げれた馬が、人参を食べたいがために一生懸命に走る」という話を聞いたことがあるのではないだろうか。それが今回の話のカギになる「インセンティブ」である。

 

インセンティブはとても強力で、インセンティブがあると利益を得るために人は自発的に行動するようになる。しかし、今回の「かかりつけ薬剤師制度」は患者にとってのインセンティブがとても弱い。

 

要するに今回の「かかりつけ薬剤師制度」は人参が足りない状態であると言える。つまり、人参をいかに患者に与えて、自発的に「かかりつけ薬剤師を持とう」と思ってもらえるかが重要だということだ。

 

どのようなインセンティブが効果的か

ではどのようなインセンティブが効果的だろうか。ベタだけど、僕はやはり「値下げ」というインセンティブが1番効果的だと考えている。つまり、かかりつけ薬剤師を持てば薬をもらう時の代金が安くなるという制度にするということだ。

 

しかも、数十円ではなく100円以上は安くする必要がある。数十円だと「まぁかかりつけ薬剤師はいなくてもいいや」と考える人が一定数でてくるからだ。

 

年収300万円台が当たり前になりつつある昨今、100円以上の値下げは「かかりつけ薬剤師」を持つための強いインセンティブになるだろう。

 

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薬局への手当をどうするか

値下げというインセンティブを使うと「かかりつけ薬剤師を持とう」と考える患者は増えるはずだ。しかし、この方法だと薬局の利益は少なく負担だけが大幅に増えることになってしまう。

 

そうしないためにもかかりつけ薬剤師を抱えている薬局には、別途で点数を加算する制度を作れば良いだろう。そうすれば、患者側も薬局側も「かかりつけ薬剤師制度」からメリットを感じることができるようになるはずだ。

 

しかし、これには問題がある。医療費を圧縮したいと考えている国にとってはさほどメリットがなくなってしまうので、財源をいかに確保するのかという問題にぶち当たるのだ。

 

だが、これもインセンティブという視点から解決できるのではないかと僕は考えている。スケールが大きな話になってしまうのだが(これしか思いつかなかった)、健康保険料の徴収方法を変えてしまうのだ。現状では健康保険料は収入で決まっている。これはよく考えるとおかしなことだ。

 

例えば収入が500万円であるAさんとBさんがいると仮定しよう。そして、Aさんは定期的に健康診断を受け、タバコも吸わない健康に対する意識が高い人で、Bさんはその逆でタバコをたくさん吸うし、健康診断も受けない健康に対する意識が低い人だとする。

 

ここから考えると、当然Bさんの方が病気になるリスクが高い。それにも関わらず、AさんはBさんと同じ額だけ健康保険料を納めなくてはならないのである。これはどう考えてもおかしい。

 

つまり、健康保険料を「健康診断を毎年受けている」、「喫煙の有無」などで収める額を変動させて、病気になるリスクが高い人ほど負担額を上げ、リスクの低い人ほど負担額を下げるのである。こうすることによって、国民の健康意識が高くなるので医療費の圧縮が可能になるはずだ。

 

この圧縮した分の一部を、かかりつけ薬剤師を抱える薬局にまわせば患者、薬局、国にWIN-WINの関係ができる。患者は薬を安全に服用することが可能になるし、薬局はかかりつけ薬剤師制度から利益を上げられ、国は医療費を圧縮できて三方向よしである。

 

まとめ

以前の記事では「かかりつけ薬剤師制度を普及させるには、薬剤師の認知度を上げ信頼を得ることが大事だ」と偉そうなことを書いたが、これは理想論であって実際にはかなりハードルが高い方法だ。普及するまでに時間がかかるし、ヘタしたら普及しないで終わることもありうる。

以前の記事:「かかりつけ薬剤師」は今のままでは絶対に普及しない

 

現実的には制度自体を先に普及させ、患者が「かかりつけ薬剤師」を実際に経験することによって、「あっ、かかりつけ薬剤師っていいじゃん」と思ってもらうことが1番この制度を普及させる良い方法だろう。

 

どっちにしろ「今のかかりつけ薬剤師制度」では患者にとってのインセンティブが非常に弱く、一方で薬局にとってのインセンティブが強い状態なので普及は難しいと言わざるを得ない。言い方は悪いけど、押し売りと同じようなものだし、信頼を損なう可能性の方が高いように思う。

 

大事なのはインセンティブがあるように制度設計をし、WIN-WINの関係を築くことだ。そうすれば自発的に「かかりつけ薬剤師を持とう」と患者は思うはずである。

 

かかりつけ薬剤師制度を普及させる気が“本当にあるのならば”、僕が短時間でちょろっと考えた雑な制度設計ではなく、ちゃんと「かかりつけ薬剤師」を持ちたくなるような制度にしてほしいと思う。

 

PS:追記で書きました→かかりつけ薬剤師になりたくない人が批判されるのはおかしい

 

PPS:インセンティブを考える上では、ヤバい経済学 [増補改訂版]という本がとても面白いのでお勧めです。経済学の知識がなくても楽しく読めます。

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