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“お薬手帳を持ってくるとお得”という表現は悪いことなのか

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2016年4月からお薬手帳を薬局に持参すると負担額が安くなるようになった。TVでもこのことを“賢い節約術”として紹介したようで、薬局にお薬手帳を持参する人の割合はかなり増えた。

 

それを受けて“お薬手帳を持って来ればお得になる”という表現は、お薬手帳の本来の意義を軽視しているのではないかといった意見があるという話をこの前たまたま聞いた。

 

たぶんこういった意見を持っているということは、かなり真面目な人だと推測されるのだけど、僕はそこまで真面目にならなくても良いのではないかと思っている。

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“お得”という表現は悪くない

“お薬手帳を持ってくるとお得”という表現は本来の意義を軽視しているという意見があるものの、僕はそこまで悪い表現ではないと考えている。むしろ良い表現なのではないだろうか。理由は単純で、患者がお薬手帳を持ち歩く強い動機付けになるからだ。

 

たしかに動機は不純かもしれない。しかし薬剤師としては併用薬があるかどうかを確認したいわけであって、患者がお薬手帳を持ってきてくれなければこれは難しい。(口頭で確認することもできるが、適当なことを言う患者も少なくない)

 

お薬手帳を持ってくるとお得になることのメリットは、患者はお薬手帳を持って来れば安くなるし、薬剤師はお薬手帳で併用薬を確認できることにある。このように、お互いにメリットがあるという点で“お薬手帳を持ってくるとお得”という表現は別に悪くないように思う。

 

意義だけでは人は動かない

そもそも人間は意義だけではなかなか行動しない。もし意義があれば行動するのなら、今までもお薬手帳を携帯する人は多かったはずだ。

 

薬剤師として働いているのなら、お薬手帳の意義を説明しても全然お薬手帳を持ってこない患者に何度も出会っていると思う。“一生懸命、お薬手帳の意義をアピールすればみんな理解してくれる”という考えを持っている人も少なからずいるようだが、世の中そんなに甘くはない。

 

つまりこの考えは道徳的には正しいのだけど、現実世界では上手く機能しないのである多くの人間は自分にメリットがあれば動こうとするし、デメリットがあるのなら簡単には動かないのだ。

 

だからこそ“お薬手帳を持って来ればお得”という表現は、お薬手帳を携帯するという行動を促す上でかなり有効なのである。

 

「お薬手帳の意義を理解する」→「お薬手帳を携帯するようになる」という順番はたしかに理想的かもしれない。しかし、これは患者にとってかなり面倒なことなので実現するのはかなり難いし、実際に実現できなかったという事実がある。

 

一方、お薬手帳を持って来ればお得になるのであれば、多くの人が“お薬手帳を持っていこう”と考えるようになる。実際お薬手帳を持参する患者は多くなったことがその証明だろう。

 

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お得という表現はお薬手帳の意義を軽視していない

そもそも“お薬手帳を持ってくるとお得”という表現が、お薬手帳の意義を軽視しているという意見自体もちょっと違うのではないだろうか。

 

なぜかというとお薬手帳を実際に持ってきてもらえれば、薬剤師はその手帳を見ながら“他に薬は使っていないということでお間違いないですか?”などと患者に対してお薬手帳の意義をさりげなくアピールすることができるからだ。

 

こう考えると、今までは「お薬手帳の意義を理解する」→「お薬手帳を携帯するようになる」という流れだったのが、「お薬手帳を携帯するようになる」→「お薬手帳の意義を理解する」という順番になっただけである。つまり、お薬手帳の意義を伝える手段が変わったと捉えるべきなのだ。

 

しかも後者のやり方はお薬手帳を携帯する人が増えるため、お薬手帳の意義をアピールするチャンスもそれだけ増えることを意味する。そして、お薬手帳を使って薬の飲み合わせを確認することにより、薬剤師の存在意義をアピールすることにもつながる。

 

一方、前者のやり方はお薬手帳の意義を理解してもらえるという意味でも、お薬手帳を持ってきてもらうという意味でも上手く機能していなかったように思う。(もちろん後者のやり方も始まったばかりで、まだ何が起こるか分からないが)

 

というわけで“お薬手帳を持ってくればお得”という表現はデメリットよりもメリットの方が多いように思う。道徳的には良くない表現なのかもしれないが、僕にはこの表現がそこまで悪いものとは思えない。

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